2003.12.20

ただいま。

YOKO

「ただいま〜!」カウンターのいつもの席めがけて小走り。
ドカっとスツールの下に大きな荷物を投げるように置く、
家へ戻るより先にこの店へ来る、不良娘の帰省のスタイル。
外の寒さに思わず小走りで入って来た、バッグの中身をガサゴソ…
マスターへのお土産と、煙草と…「あ、今日は久々にシェリーを飲みます」
にょきっとカウンターの下から顔だけ出して、マスターとご対面。

「ふぅー…はい、これお土産です。帰省してきました!」
「相変わらずじゃね」と愉快そうに笑うマスター。
ペコっと頭を下げて、落ち着きなくてゴメンって言う風に苦笑い。
「ここも相変わらずじゃねー」とやっと煙草に火を点ける頃、
スッと一杯目のシェリーが差し出される、
一気に飲み干したいのを我慢しつつ、それでもゴクゴクっと
二口ほど飲んでしまう、また慌てて苦笑い…

「晴れて独身になって戻って来たんよー!」こんな台詞を笑いながら
言うのは不謹慎?でもここで神妙な顔は似合わないなぁ、
私にとってのここはそういう場所。家より先に「ただいま」を言いたい、
だって家に直行したって、この時季せわしなくて、大きな荷物が増えた
みたいに扱われて、結局居心地悪くて飛び出して、ここへ来るんだから、
いつの間にか、こういうパターンになっていた。一番に「ただいま!」って。

「え?旦那なんていたっけ?」わざとらしくマスターが言う。
「ええ、おりました。形だけの旦那さんが」私もつい笑顔。
やっぱり我慢できずに、残りをゴクゴクっと飲み干して、おかわりを注文する。
「今年のクリスマスプレゼントは、独身復帰です」ふざけたように言うけど、
本音の心境。こんな台詞家じゃ言えないもの…マスターの冗談に救われる。

「来年は実家に戻るから、帰省も無くなるんだよねー。ここへ来る時、
何て言って入って来るのか迷うなぁ…」
「そろそろ、落ち着きんさい」笑いながら言うけど、これは本気の言葉。
私は苦笑いしか出来ないけど、心からありがたい…そう思う。
ずっと節目をここで迎えて、嬉しいことや楽しいことばかりじゃなかった、
親は何も言わないけど、きっとこの台詞、言いたかったに違いないなぁ…

二杯目を飲み干して、「もう行くねー」と言った。
「帰るね、じゃろ。」念を押すような台詞、現金をカウンターに置きながら、黙って頷く。
「お帰り、また来んさい」苦笑いしながら見送りの言葉、
今度は「また来たよ」って言うのかな…
やっぱり「ただいま」って言いたいな、その前に家に帰って言わなきゃ、「ただいま」って。
不良娘の卒業式になったクリスマス。